1ドル140円台(2024年9月現在)を変動するという数十年ぶりの円安は、個人や中小企業のビジネスにプラス・マイナスそれぞれの大きな影響を与えています。今回は【円安】を好機ととらえて、ポジティブな展開を進める重要さと、個人・個人事業主・中小企業でも始めやすい海外向けネットショップについて考えます。
円安で苦境に立つ個人・中小企業と消費者
円安は、海外旅行客を数多く迎える旅行・観光業や、工作機械や自動車を輸出する大手企業を除いては、ビジネスのみならず日常生活においてもマイナスに作用します。
国内で素材を輸入しエネルギーを使って加工する製造業、石油やガスで調理する飲食業や各種販売店、輸入コストで価格の上がった商品・サービスを購入しなければならない一般消費者と、デメリットに限りがありません。
また、個人や中小企業には独力で海外進出や輸出する体力も乏しく、円安メリットを享受する方法も極めて限られています。
ココがポイント
今回の円安は、残念ながら日銀や日本政府・海外情勢を見ても反転する状況にはなく、しばらく続くという前提でビジネスを行う方が望ましいでしょう。
海外に追い抜かれる平均賃金
円安が続く中、もう一つの逆風が国内で全く伸びない平均賃金です。OECDによる主要国の平均賃金・年収推移・ランキングによると、日本は1990年以降ほぼ横ばいで、アメリカやEU、そして韓国にも追い抜かれている厳しい状況です。
2020年では1ドルを110円と想定した場合、日本の平均賃金424万円に対して、1位のアメリカは763万円ですが、円安が150円台まで進んでいる2024年ではさらに差が拡大しています。
(引用:asahi.com)
ココがポイント
円安に上がらない賃金のダブルショックという“日本”視点で見ると厳しいのですが、逆に“海外”視点では新しい可能性が見えてきます。
ピンチをチャンスに変える逆転の発想
ここまで厳しい現実を見てきましたが、異なった視点で考えてみると日本企業にはビジネスチャンスが広がることは分かります。
- 円安→割増のドル・海外通貨で稼げば良し
- 日本で増えない賃金→景気が過熱する海外ユーザーに売れば良し
つまり、収益を国内ではなく海外で上げる選択肢を増やすことがこれからは重要になります。日本経済新聞も、“円安で越境EC・海外向けネットショップが増加し、中小企業に機会が来た”という主旨の記事が掲載されています。
越境電子商取引(EC)による海外への商品販売が急増している。IT(情報技術)の発達で翻訳や手続きなどが簡単になったところに急速な円安が追い風となり、中小企業が参入する動きが広がる。
円安をピンチではなくチャンスととらえれば、見える世界が違ってきます。そこで、個人や中小企業が海外向けネットショップを簡単に始められる「ネットショップ作成サービス」をピックアップしてみました。
越境EC・海外向けネットショップ作成サービス
海外の顧客に向けてネットショップを構築し販売できるネットショップ作成サービスには、1:海外発のサービスが日本に適応したものと、2:国産サービスがアプリなどで外部サービスと連携し海外向けネットショップが可能になったものの、大きく分けて2つがあります。
そして越境ECサイトのハードルとして「言語・翻訳」「決済」「物流・配送」の3つがあると一般的に言われています。各サービスでどのように対応しているか比較しながら個別に見てまいりましょう。
Shopify(ショッピファイ)おすすめ度 5
2004年創業、Shopifyの日本法人Shopify Japan株式会社が提供するネットショッププラットフォームサービス「Shopify」。海外ではAmazonと比肩するサービスとしてメディアの注目を浴びています。
Shopifyは、海外発のネットショップ作成サービスということもあって、Shopifyペイメントでクレジット決済やPayPalなど100を越える海外向けの多彩な決済があり、Shopify Marketsというソリューションでは数クリックで海外向けネットショップをスタートできるように、言語翻訳・通貨変換などを行える機能も有ります。
また、アプリをインストールして外部サービスとの連携をすることで、言語翻訳・現地通貨表示を行えるほか、自社配送する場合は送料などを表示するアプリ、そして配送をすべて外注したい場合は「NEOlogi」アプリで外部サービスと連携して、インボイスの発行や通関手続き・配送まですべてを代行してもらうことも可能です。
ココがポイント
Shopifyは、選択肢も広く柔軟性も高いので成功事例も多く、様々なことができる反面、設定がやや複雑になる傾向があります。自社で細かな設定・オペレーションなどを行えるネットショップや、将来の拡張を考えているオーナーには適しています。
初期費用 | 月額費用 | システム手数料 | 決済手数料 |
---|---|---|---|
無料 | ベーシックプラン 25ドル~ 3,625円 (1$=145円) |
無料 | 3.4%~ |
国産・海外発 | 言語・翻訳 | 越境EC決済 | 配送・物流 |
海外発 | アプリ対応 Shopify Markets対応 |
Shopifyペイメント クレジット/PayPal Amazon Payなど |
アプリ対応 外部サービス連携 自社で手配など選択 |
makeshop(メイクショップ)おすすめ度 5
GMOインターネットグループのGMOメイクショップ株式会社が運営するサービス「makeshop」は、豊富な機能が大きな特徴でありメリットです。
600を越える機能があり、さらに毎月追加をし続けています。
makeshopで越境ECを行うには、228の国と地域に販売できる外部の海外販売支援代行サービス「WorldShoppingBIZ」とmakeshop管理画面から連携申請することで、通常かかる費用が無料 *となり、売り上げ手数料もかからず、とても低いコスト負担で海外向けネットショップを始めることができます。
* 通常費用:初期費用33,000円、月額料金5,500円
ココがポイント
WorldShopping BIZのサービスを一言でいうと「海外ユーザーの買い物代行」です。販売対象国の海外ユーザーがネットショップにアクセスしたとき、表示される外国語表記のナビゲーションやモーダルに従って商品を(疑似)購入した後、WorldShopping BIZが同じ商品をネットショップで購入し、商品を海外ユーザーに発送するものです。
ネットショップの作業は、WorldShopping BIZとの契約と商品をWorldShopping BIZの国内倉庫に発送するのみと、とてもシンプルです。
初期費用 | 月額費用 | システム手数料 | 決済手数料 |
---|---|---|---|
11,000円 | プレミアムプラン 12,100円 | 無料 | 3.19%~ |
国産・海外発 | 言語・翻訳 | 越境EC決済 | 配送・物流 |
国産 | 外部サービス連携 *ショップ自体は翻訳必要 |
外部サービス連携 クレジット/PayPal Amazon Pay/Alipay等 |
外部サービス連携 |
サービスをさらに詳しく
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参考makeshop(メイクショップ)byGMO:ECサイト構築のネットショップ作成サービス
GMOメイクショップ株式会社運営の「makeshop」は、最多クラスの650以上の機能搭載が評判で、話題の生成AI機能など新機能を随時追加中。さらにエンタープライズプランでは専任サポートもつき、初めて ...
続きを見る
カラーミーショップ おすすめ度 4
MakeShopと同じGMOインターネットグループのカラーミーショップで越境ECを行う場合も、外部の海外販売支援代行サービス「WorldShoppingBIZ」とカラーミーショップ管理画面からアプリをインストールし連携することになります。カラーミーショップでは、通常かかる初期費用33,000円は無料となりますが、月額料金5,500円がかかります。
また、カラーミーショップでは約120の国と地域に販売可能な「Buyee Connect」(バイイーコネクト)アプリも利用でき、こちらは初期費用・月額料金共に無料です。
ココがポイント
Buyee Connectも、WorldShoppingBIZと同じく倉庫に商品を発送するだけで越境ECをすぐに行えます。Buyee Connectは、台湾に強みがあるメリットがある反面、販売対象国が約120か国とWorldShoppingBIZと比べてやや少なくなりますので、ニーズに合わせて選んでください。
初期費用 | 月額費用 | システム手数料 | 決済手数料 |
---|---|---|---|
0円 3,300円 |
フリープラン 0円 レギュラープラン 4,950円 |
無料 | 6.6%+30円 4%~ |
国産・海外発 | 言語・翻訳 | 越境EC決済 | 配送・物流 |
国産 | アプリ対応 外部サービス連携 *ショップ自体は翻訳必要 |
アプリ対応 外部サービス連携 クレジット/PayPal Amazon Pay/Alipay等 |
アプリ対応 外部サービス連携 |
BASE(ベイス)おすすめ度 3
東証グロース市場上場のBASE株式会社が運営するネットショップ作成サービス「BASE」では誰でも簡単にネットショップを始めることができます。月額無料の「スタンダードプラン」と月額有料の「グロースプラン」があります。
BASEの越境ECは、アプリで言語対応を行い、ハードルが高い海外向け出荷・発送については海外向け物流代行サービス「NEOlogi(ネオロジ)」と、アプリを使って連携することで実現できます。
コストについては、初期費用や固定費はかからず、利用した分のみの従量課金制なので、継続した注文がない、試しや副業でやってみたいネットショップには最適です。
また出荷の流れは、専用クラウド型物流システムより出荷作業を容易に行え、多様なECシステムと連携することで自動出荷にも対応と、越境ECについての諸問題を解消しています。
(*2023年4月1日よりAmazon Pay,PayPalのみ3.6%+40円→4.6%+40円に変更)
初期費用 | 月額費用 | システム手数料 | 決済手数料 |
---|---|---|---|
無料 | スタンダードプラン 無料 グロースプラン 16,580円 (2024/1/16~) |
3% 0 |
3.6%+40円 * 2.9% |
国産・海外発 | 言語・翻訳 | 越境EC決済 | 配送・物流 |
国産 | アプリ対応 | PayPal/Amazon Pay 銀行振り込み |
アプリ対応 外部サービス連携 |
サービスをさらに詳しく
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参考BASEで越境ECを始める ~自社商品を150か国以上にお届けできます~
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STORES(ストアーズ)おすすめ度 2
ストアーズ株式会社提供のネットショップ作成サービス「STORES」(ストアーズ)には、月額固定費無料のフリープランと有料のネットショップ ベーシックプラン(2024/1/16にスタンダードから名称変更)の2つのプランがあります。
管理画面で「英語対応」に設定すると、ストアの定型文表示などが英語に切り替わります。海外発送料金などの設定もシステム上で行えますし、海外向け決済はクレジットやPaypalで可能です。
しかし、商品の発送はEMSや民間宅配便を自社で手配することが必要など、ストアーズの海外向けネットショップはコストをかけずにとりあえず試してみたい、という方に適した簡易版的な位置づけのサービスになります。
初期費用 | 月額費用 | システム手数料 | 決済手数料 |
---|---|---|---|
無料 | フリープラン 無料 ベーシックプラン 3,480円 |
無料 | 5.5% 3.6% |
国産・海外発 | 言語・翻訳 | 越境EC決済 | 配送・物流 |
国産 | システムで英語対応 | クレジット/PayPal | システム対応 配送は自社手配 |
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まとめ
今回の円安は、日銀が金融緩和を続け金利を据え置く方針に変わりはなく、また政府も円安対応企業の支援を打ち出すなど、ここしばらくは円安傾向が続くと想定されています。ネットショップオーナーには、この環境下でもしっかり利益を確保しながらビジネスを成長をさせることが求められています。
ピンチの中にチャンスあり!
日本国内にいながら、そして中小企業や個人でも簡単に始められるようになった「越境EC」・海外向けネットショップで、アメリカやヨーロッパ、中国など海外顧客に向けて、日本の人気商品や自社製品を販売する絶好のチャンスと考えて行動することが、今後のビジネスの存続を左右する重要なポイントとなるでしょう。