これまで順調に成長を続けていたEC市場、いわゆる電子商取引・ネット通販ですが、経済産業省が電子商取引などを実態調査した「令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)」では物販系EC化率が8.08%とアップしたものの、23回の調査で初めてEC市場全体の減少を記録しました。
7月30日に公開された2020年度版のデータについて見てまいりましょう。
2020年度日本のBtoC -EC市場規模は?
国内の一般消費者向け電子商取引全体では、19 兆 2,779 億円と前年より830億円(前年比0.43%)の減少となりました。さらに企業間電子商取引であるBtoB-EC市場規模も前年の353.0兆円から334.9兆円と5.1%減となり、個人市場・企業市場共に減少に転じています。
物販系・サービス系・デジタル系3分野の国内一般消費者向け電子商取引の構成比は下記のとおりです。
物販系の伸び率が最も高く21.71%、次にデジタル系で14.90%でしたが、サービス系の落ち込みが36.05%と極めて大きく、トータルで0.43%の減少という内訳になっています。
ココがポイント
コロナウィルスの影響で外出を手控えたため、巣ごもり消費の拡大で物販系・デジタル系が伸長した半面、サービス系が総倒れ状態となり、2分野の伸びをカバーしきれなくなったのが要因です。分野ごとに詳しく見てみましょう。
物販系分野動向
物販系のEC市場規模とEC化率の推移を確認します。
EC市場規模、EC化率ともに成長しておりEC化率は8.08%と前年の6.76%から1.32%ほど伸びています。
さらに細かい分野ごとの内訳は下記の通りです。
市場規模が最も大きく(2兆3,489億円)、EC化率(37.45%)も高い分野は「生活家電・AV機器・PC・周辺機器等」です。
EC化率が最も高い分野は「書籍、映像・音楽ソフト」で42.97%と過半数に迫っています。
一方で、市場規模が大きい(2兆2,086億円)もののEC化率が低い(3.31%)分野は「食品、飲料、酒類」で、そのギャップが際立っています。
ココがポイント
食品や医薬品など、保存や配送に難がある物や法規制が影響している分野はEC化率が低い傾向が顕著ですが、今後の技術革新・意識の変化、規制緩和でEC化率が上昇する可能性も秘めていますね。EC化率の向上には欠かせない分野ですので、今後の動向に注目です。
サービス系分野動向
続いて、サービス系の動向をチェックしましょう。
2020年度はサービス分野の減少幅が極めて大きく、EC市場全体に影響を及ぼしています。
金額、比率ともに大きな影響が出ている分野は「旅行サービス」(1兆5,494億円)です。前年より2兆3,477億円も減少しており、「飲食サービス」、「チケット販売」を加えるとトータルで市場規模が4兆5,832億円で、前年より2兆5,840億円(36.05%)も減少となっています。
デジタル系分野動向
そして巣ごもり需要で伸びたデジタル系分野です。
2019年度は苦戦していた最大市場の「オンラインゲーム」が、巣ごもり消費で息を吹き返し7.50%の伸びを示し、「電子出版」、「有料音楽配信」、「有料動画配信」など全分野で成長しています。
ココがポイント
次に、サービス系とデジタル系を比較したグラフを見てみましょう。サービス系の落ち込みが明確になりますので、コロナウィルスの影響がいかに大きかったかが一目瞭然です。
2020年度日本のCtoC -EC市場規模は?
メルカリなどフリマアプリの急成長を要因とした個人間取引、いわゆるCtoCが1兆9,586億円と前年の9.5%から12.5%とさらに伸びています。
自宅で過ごすことが増え、物販や中古品など取引が増加したことが影響していると考えられます。
2020年度越境EC市場規模は?
最後に、日本・米国・中国の3か国間でのネット通販・越境EC市場規模を確認しましょう。
越境EC市場は順調に成長しており、いずれの国の間でも増加しています。さらに上記以外にも、中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額1兆9,499億円(前年比17.8%増)、米国事業者からの越境EC購入額2兆3,119億円(前年比15.1%増)となっています。
ココがポイント
海外に向けたネット通販、越境ECは「言語」「通貨」「配送」の壁があります。最近では越境ECに強いネットショップ作成サービスも増加していますので、これらの利用が越境EC市場の伸びに影響している面もあるでしょう。
出典
経済産業省
令和2年度産業経済研究委託事業(電子商取引に関する市場調査)
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まとめ
コロナの影響が大きい
2020年度の調査では、コロナショックという特殊要因があるものの、EC市場規模全体が減少するという驚きの結果となりました。
しかし、一般消費者向けの物販や海外向け通販(越境EC)のさらなる拡大、そしてワクチンの普及による旅行やエンターテインメント関係などサービス分野のECビジネス復活など、将来のEC市場は堅調に推移するものと考えられます。
コロナ変異種というマイナス要因はありますが、大きなトレンドを捉えて次のステップに進む準備は継続して行っておきましょう。